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日本に輸出しているアメリカ資本のメーカーの製品をアメリカ製品とみなし、一方アメリカ進出の日本企業の製品を日本製とみなして、日米一人当たり、お互いにどれだけの製品を購入しているかを計算したら、日本人は一人当たり四百八十ドルのアメリカ製品を買っているのに対して、アメリカ人は日本製品を二百八十七ドルしか買っていないことになったそうだ。
モノの生産貿易あるいはカネのやりとり、企業活動にとっても、国家という枠が邪魔になりつつある。
たがとすれば、国家が枠、植を強化してモノ、カネ経済を捕捉しようとすればモノ、カネ企業は当然国家から脱出、遁走を図り、結局はいわば国家自体が自由化に向かわざるを待なくなる。
宮沢のいうマドル・スルとは、そのための試行錯誤、模索なのだろう。
くり返し記す。
マドル・スルとは、国家政治が経済を取り込んでコントロールする方策を模索するためではなく、国家自体の自由化のための模索であり、だからこそ判例がなく、方程式もない、まさにマドル・スルなのだ。
「アメリカが世界の牽引車になり、世界に院みを利かせる、つまりパックス・アメリカ−ナの時代が終わった。
マドル・スル!の時代というのはギクシャク、つまり摩擦が生じるのが当然、摩擦が生じるのはそれぞれの国が活力会肴している証拠だと前向きに受け取って、その中で生きていく、したたかさが必要だと思な。
一九八五年九月二十二日、ニューヨークのプラザホテルで、その後の世界の流れを大きく変えた五ヵ国蔵相会議が行われたが、それと同じ時期に京都の金箔会社に一通の英文の書類が届いた。
F田金属箔粉工業。
創立は元禄十三年(一七00)というから赤穂浪士が吉良邸に討ち入ったときはすでに金箔や銀箔をつくっていたわけだが、それから二百八十年以上ずっと金属箔や金属粉を生産しつづけているのだ。
従業員数約六百人年間売上額約三百億円。
京都の地味で堅実な老舗メーカーである。
F田金属箔粉では、すぐに英語のできる社員が書類を翻訳した。
書類の内容があきらかになった途端に幹部たちは騒然となった。
書類はアメリカ・ミシガン州の地方裁判所からで、F田金属箔粉の責任者に対する出頭アメリカが仕掛ける「日本潰し」の民命令だったのだ。
なぜ、薮から棒にミシガン州の地裁から出頭命令など飛び込んできたのか。
本政男社長以下、誰にもさっぱり見当がつかなかった。
もちろんすぐに顧問牟議士に連絡を取って書類の内容を検討した。
訴えているのはミシガン州のアチソンという会社で、どうやら銅粉をチタン窓口物で処理した塗料がアチソン社の特許侵害だということのようだつた。
実はF田金属箔粉は八四年の秋からイリノイ州のビ−・ケミカルとい、会社に銅粉を輸出していた。
チタン化合物で処理も行っていた。
ピ−・ケミカルは、それでコンピュータの電磁波を遮る塗料を製造して、IBMに納入していたのである。
この数年前から電磁波がコンピュータなどエレクトロニクス機器にさまざまの狂いを生じきせる電磁波公害が問題になり、アメリカでは八三年(日本は八六年から自主規制から、コンピュータ関連機器に塗料を塗るなどして電磁波を遮断することが義務づけられていたのだ。
だが、アチソン社が特許侵害だと訴えているのは塗料であって、F田金属箔粉が輸出しているのはその素材である。
それに銅粉をチタン化合物で処理するなんてことは何も日あたらしくない、いわば公知の事柄なのだ。
「とにかくウチは銅粉を明治以前からつくっているわけで、特許侵害だなんてとんでもない話ですよ」大正七年(一九一八)生まれで七十歳を日前にした本社長は一年半前の憤りそのままの口調でいった。
「伝統ある会社のメンツにかけてもアチソン社と徹底的に戦おうということで、商社会弄物産に頼んでこうした事件に詳しい弁護士を紹介してもらい、アメリカ人の非議士もたてたのですがね」途中で本社長の気持ちは変わった。
日米の特許侵害を専門にやっている非議士が繋附されて、最後まで裁判で争うのは危険なギャンブル。
最近日本企業が特許侵害でやられた五十件のうち、日本側が勝ったのは一件しかないと話していたのを読んだのですよ」確かに、本社長がいった日経産業新聞で、ロサンゼルスのコ−ダ・アンド・ローラ国際特許法律事務所のへンリ−幸田が、日米聞の特許係争での日本企業の惨惜たる負けぶりを痛烈に語っている。
「よく考えてみると、アメリカの弁護士が一回日本にやって来て会議する度に何百万円とかかる。
裁判は二年も三年もかかるわけで、となると軽く億を超えてしまう」本社長の説明では、F田金属箔粉が、ピ−・ケミカル社に輸出していた金額は八四年が五百二十万円、八五年でも一千五十万円に過ぎないのである。
これでは億。
以上の金を使って裁判を続ける意味がない。
そこで福岡金属箔粉は八六年に入ってアチソン社と和解究渉を開始したのだが、すると事態はなんとも奇態な展開を示しはじめたのだ。
まず、特許侵害で訴えたはずのアチソン社が、何とF田金属箔粉にチタン化ロ物で処理した銅粉房長知ってほしいといい出したのである。
実はアチソン社はピ−・ケミカル杜と福岡金属箔粉を訴えていたのだが、やはりIBMに電磁波遮断塗料の納入を図っていて、ライバルのピ−・ケミカル牽制と素材獲得の一石二鳥を狙った。
それにしてもF田金属箔粉に売って欲しいといい出したということは、特許侵害だと訴えながら製品はまだつくれてないわけだ。
製品もつくれないで特許侵害とはどういうことか。
本社長はなんとも割りきれない気持ちで、和解究渉と販売究渉を同時に進行させた。
もちろん時聞がかかるとそれだけ費用がかかるからだ。
アチソン社は、当初五万ドルのペナルティを要求していたが、結局三万ドルで妥結した。
一ドル百五十円として四百五十万円。
このときまでにかかった弁護士費用はその何倍にも及んだ。
これも本社長にはどうにも釈然としなかった。
だが、彼は奇怪な事態に見舞われた。
一九八六年九月、アチソン社との和解が成立すると、今度はピ−・ケミカル社が「貴社がアチソン社の主張を受け入れて和解したので当社の立場は著しく不利になり、アチソン社にペナルティを支払わざるを得なくなった。
だからペナルティ分を負担せよ」と三万ドルを要求してきたのだ。
「ムチャクチャな話ですよ。
本来ならばアチソン社の要求だって全くおかしなことなのですからね。
いわんやピ−・ケミカル社のアチソン社との係争なんてわが社には関係がない」本社長は憤然としていった。
彼はピ−・ケミカル社の三万ドルの要求をかなり値切りはしたものの、結局支払っているのである。
数倍いや十数倍の費用がかかってかえって損だと判断したからだ。
それにしてもF田金属箔粉が要した二千万円近い金は一体何なのか。
わたしたちの常識でいえば何ともひどい言いがかりで、知的恐喝まがいの事件だ。
あるいはたまたま国際事情に無知すぎる京都の老舗金箔メーカーが、たちの詐欺的連係プレー−にひっかかったということなのか。
「日本の企業は競争相手に勝つために、商品品質やコスト、アターサービスなどで勝負するわけですが、アメリカの企業はそれに加えて法律、裁判を強力な武器として使います。
特許や著作権侵害、あるいはダンピング」。
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